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projectB 牛や鶏のうんちで家庭用のバイオガスをつくるプロジェクト‐バングラディッシュ‐

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グラミンと行う農村の家庭用バイオガス普及

PEARは,アジアの最貧国であるバングラデシュ農村において、あのユヌス氏のグラミン銀行ファミリーで農村のエネルギー開発を受け持つグラミン・シャクティと協力関係にあります。
その活動のひとつとして、いまだに薪などを煮炊きに使っている同国全域の農村において、地産地消型再生可能エネルギーであるバイオガスを普及し薪を代替させるプログラムを行っています。それによって農家は不便で高価な薪から便利なガスに転換でき経済面・健康面・時間面・労働面などで大きな便益を受けることができるようになります。良質の肥料も得られます。また、この活動は森林破壊を食い止めるなど社会的にも多面的な便益のあるCO2削減活動です。
PEARはさらにこの活動を従来の公的資金による「援助」の枠組みを超え、すこし余裕のある農家がまわりのより貧しい農家にガス供給を行うという「ビジネス」を通じた自主的なチャンネルを動かすべく、グラミン・シャクティと活動を続けています。

Project背景

最貧国の一つバングラデシュは、ノーベル平和賞を受賞したユヌス氏のグラミン銀行(http://ja.wikipedia.org/wiki/グラミン銀行)が農村の貧しい人たちを対象に非常に革新的なビジネスを通じた開発モデルを行ってきているなど、魅力的な国でもあります。また人々は素朴で勤勉な性格を持っています。
グラミン銀行ファミリーの一つグラミン・シャクティは、政府の農村エネルギー普及プログラムの旗頭としてバングラデシュ全土で活動しています。PEARは理念を共有するグラミン・シャクティと共同して、農村用エネルギーのうち厨房用エネルギーを対象にバイオガスを普及させる活動を進めてきています。
バングラデシュでは、ダッカなど一部の都市を除けば家庭での調理はほぼすべて薪などのバイオマスを熱効率の悪い(10%程度)かまどで使っています。すすによる健康被害(発がん性もあります)に加え、薪購入費用や収集労力を要すること、調理に時間がかかるなど恒常的貧困の原因のひとつになっています。それに加えマクロ的にも森林破壊の大きな要因となっています。
これを部分的に緩和する方法として熱効率を上げた改良かまど(ICS=improved cookstove)と、抜本的に解決する方法としてバイオガス・ダイジェスターがあります。グラミン・シャクティはこれらの普及に努めています。
ただ、グラミン・シャクティの導入したバイオガス・ダイジェスターは累積でまだ2万〜3万台程度と、2,000万戸を超えるバングラデシュの農村世帯の中では微々たるものにすぎません。

活用された技術

有機物は酸素のない状態で発酵させることで、メタンを発生させることができます。これを効率よく行うタンクが、バイオガス・ダイジェスターです。バイオガスの材料は牛もしくは鶏の糞です(バングラデシュはムスリムの国なので豚はほとんどいません)。ダイジェスターは通常は煉瓦とセメントを使って建設期間は二週間ほどです。
もっとも多い日量2.4 m3のバイオガスを生成するダイジェスターには、3万3千タカ(1タカ=ほぼ1円です)のコストがかかります。グラミン・シャクティは政府プログラムNDBMP (National Domestic Biogas and Manure Program)の最大の実施者で次のようなメニューを持っています:
農家は補助金9,000タカ、頭金15% 2年間のローンスキームを組むことで、初期費用3,500タカ、月賦1,000タカ弱で導入が可能です。薪購入費用が月にやはり1,000タカ程度ですので、初期費用さえ払えればあとは通常の薪購入費用で済みます。加えて2年後には燃料費ゼロで、前述のようなさまざまな付随的な便益が得られるすばらしいスキームであるわけですね。
なお、得られたバイオガスはガスコンロで調理に用います。場合によっては、ガス灯による照明や発電にも用いられることがあります。


取り組み状況


バングラデシュでは、政府系ノンバンク金融機関であるIDCOLという機関が、上述のバイオガス政府プログラムNDBMPを運営しています。グラミン・シャクティは、そのプログラムで半分以上の導入を行っている実施機関です。
グラミン・シャクティは、2012年10月時点の累積で23、658台設置してきていますが、設置ペースは月に500台程度で頭打ちとなっています(一方で、無電化地域の太陽光システムや改良かまどは、それぞれ月に2万台の設置が行われてきています)。その意味で、プラスアルファが必要となっています。
PEARは、グラミン・シャクティの活動を中心としたIDCOLのプログラム全部を、CDM化します(現在、その審査が最終段階です)。2012年末からの活動が、このCDMでカバーされます。このCDMは、バイオガス・ダイジェスターの普及を加速することを目指したものとなっています。
PEARは、この状況に2つの視点からメスを入れ、バイオガス普及をブーストさせるべくグラミン・シャクティと努力してきています。
そのひとつは「CDM化+GoldStandard認証」で、CDMプロジェクトとすることで、CO2削減効果から追加的資金を生みだし、財政面で導入しやすくしようというものです。みなさんがご自分のカーボンオフセットを通じて出されるお金がここに用いられるわけですね。CDMプロジェクトは、政府プログラムであるNDBMPのマネージメントを行っているIDCOLという政府系金融機関ともいっしょに行っており、グラミン・シャクティ以外のNGOの行っているバイオガス・ダイジェスター普及プログラムも含んでいます。
もうひとつは、「マイクロユーティリティーモデル」で、上記の少ない頭金を出せない、あるいは家畜をもっていない農家も、バイオガスの恩恵を享受でき、またバイオガス供給力をビジネスを通じた自立的な形で強化しようとするものです。すなわち、家畜に余裕のある農家が、大きめのダイジェスターを導入し、ガスチューブを使って、バイオガスを「販売」するガス供給事業を行うモデルですね。「販売」する農家にとっても「使う」農家にとっても、メリットの大きなモデルですので、農家へのプロモーションが進めば、ビジネスというチャンネルを使って、大きく展開できる可能性を秘めています。
なお、マイクロユーティリティーの部分はJICAのBOPビジネス支援スキームを活用させていただきました。CDM化は環境省/地球環境センターの支援を受けました。

恩恵を受ける人

バングラデシュでは、他の途上国と同じく、人口の大多数を占める農村のひとたちは、いろいろなハンディキャップを持っています。生活の基盤部分であるエネルギーでは、大別して照明などの電気と、台所での調理用熱エネルギーの双方において、かなり困難を強いられているのが現状です。
調理用では、葉っぱ、小枝、薪などのバイオマスが用いられています。牛糞を乾燥させて用いる場合もあります。調理に用いられるかまどは、熱効率の悪い三点支持式のかまどが一般的です。
バイオマスは、持続可能な管理のされている森林からのバイオマスであるなら再生可能すなわち固定された大気中のCO2を再放出するだけですので、問題はないのですが、バングラデシュをはじめとする多くの途上国では森林およびその生態系がそれによって破壊されてきており、CO2の意味でも純排出となっています。
実際、バングラデシュではむかしは薪は近隣で採取できたのですが、いまでは市場で買ってくるようになっていて、その値段も上がり続けていて、一家庭あたり月に500タカの出費を強いられています。
また、バイオマス燃焼に伴うすす(ブラックカーボン)は、発がん性などの健康被害が大きな社会的問題となっていて、その被害を被っているのが、社会的弱者である女性と子供です。また、時間を要する調理は、女性にとって大きな負担となっています。
この状況は、バイオガスを利用することによって、ドラスティックに変えることができます。
ダイジェスターを導入すれば薪の購入費用がゼロになりますし、バイオマス収集の労力も要りません。女性の労働時間は一日で1時間20分も削減できます。屋内大気汚染問題もなくなります。調理時間も半分以下になり、ずっと便利になります。そのうえ、窒素分に富んだ良質の有機肥料がとれ、家畜の糞尿による悪臭も緩和されます。
マクロ的にも、森林やその生態系保全効果や、エネルギー自立型農村開発となるわけですね。もちろんCO2フリーです。

カウンターパート

カウンターパートであるグラミン・シャクティは、ユヌス氏が農村開発のエネルギー面からのソリューションを提供するためにつくったNGOで、1万2千人のスタッフでバングラデシュ全域に1、500のオフィスを展開し、5万の村々をカバーしています。グラミン銀行ファミリー組織の中では、グラミン銀行に次ぐ大きさです。
主たる活動は、50Wp程度の太陽光システム(SHS)、改良かまど(ICS)、そしてバイオガス・ダイジェスターの普及です。とくにSHSはおそらく世界の最貧国の中で、もっとも成功したモデルをもっていると言えるでしょう。
これらの大量普及のためには、エンジニアの育成プログラムやメインテナンスシステムを含んだしっかりしたマネージメントシステムが必要で、グラミン・シャクティは、この大量普及を可能とする組織立てができています。
PEARは、グラミンファミリーの行ってきていることやその背景となっている考え方に深く共感していて、2010年初めに知り合って以来、協力を進めてきており、今後も多方面で協力を進めていきます。

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